人生七転び八起き Vol.8


★コラム8 ミナミダイトウ中学校 前編

【赴任】
4月1日、赴任の日。妻子との涙の別離を経て、私は28番ゲートへと向かった。いよいよ、私の新たな教員生活が始まる。職場でうまくやっていけるかな。生徒と向き合えるかな。この先に待っている生活に期待と不安で押しつぶされそうになりながら、私はふと息子のことを考えた。

さんざん待たされた挙句、「機材不足のため、◯◯行き867便は欠航となりました。」私の胸に空しく響くアナウンス。いやはや、前途多難だ。

翌日、気の抜けた出発。もうどうにでもなれ、半ば諦めにも似た気持ちでバスに乗った。周りに目を向けると、そわそわと外の様子を眺める人、着慣れないスーツで窮屈そうな人、家族と共に楽しそうに微笑んでいる人、どことなく不安げな表情の姉妹など、さまざまな人が同乗していた。この方々ともうじき同僚になるんだな。
無事M空港に到着した。イメージとは違い、小綺麗な感じ。空港での蝿の歓迎には正直驚いた。大変な所に来た。これが私の第一印象だった。児童生徒による歓迎セレモニー。私のラフな服装がちょっとだけ恥ずかしかった。あれだけ妻に言われたのに素直に聞き入れない私の頑固さ。初めて対面した島の子は、みんな瞳が輝いていた。また、街の子と比べて幼く見える。私はなんだか嬉しくなった。職員の中にアキオさんの顔を見つけて安心した。

赴任早々のカレーパーティー。旧職員の方々がしきりに島のジャガイモのことを自慢していたのが印象的だった。なんとかここでやっていけそうな気がした。
自宅で荷物の整理をしていると、野球部らしき男子生徒が2名やって来た。「新しい先生ですか?」この一言で、私はとても爽やかな気持ちになった。あの生徒に、あとで話し掛けてみよう。後になって思い出してみると、チカラとケンタだったような気がする。

【神社にお参り】
霊能者の方に教わった通り、島の守り神である神社に参拝に行った。まずは新参者として『よろしくお願いします』と挨拶しました。これから始まる島での生活、どんなことが待ち受けているのかは『神のみぞ知る』といったところかな?

【漁業体験】
当日、私は学校で1、2年生の授業があったために漁船に乗れなかった。楽しみにしていただけにとても残念だった。しかし、早朝の出発式に参加をして生徒たちの安全を祈願した。来年こそは乗りたいものだ。朝10時頃に3年生のマリコが職員室を訪れた。船酔いをして、早めに陸に揚がったそうだ。もう、気分は大丈夫らしい。その日の給食にはマグロの刺身が一品加えられていた。

【職域対抗球技大会】
大会に向けて、職場で練習を重ねた。バレーボールはそれほど得意ではないので、少々おとなしくプレーしていた。しかし、アタックは別。思いっきりボールを強打し、ストレスを発散した。職員からの「できるじゃないか」の一言が微妙に心を揺さぶった。

【丸坊主事件】
居酒屋での出来事。同僚のタケヤさんが島の青年にバリカンで丸刈りにされた。本人は少しだけ切るつもりだったらしい。鏡に映る自分の姿を見て、ショックのあまりに固まってしまったようだ。涙目になりながら、みんなの前に登場した。心中を察すると居ても立ってもいられなかった。何とかしないと。翌日、生徒たちに嘲笑されている彼の姿が脳裏を横切った。よしっ!決心するまでにそう時間はかからなかった。同僚のテツヤに事情を話し、「一緒に丸坊主にしないか」と尋ねてみた。彼の顔が微妙に歪んだ。しかし、先輩思いの彼は泣く泣く承諾してくれた。

【南北交流試合】
南北交流試合は島をあげての大イベント。選手に選出されることは村民に実力を認められた証であり、とても名誉なことだ。今年は応援に回ったが、来年は選手として参加するぞと心に誓った。今年は南島での開催となる。

【気が狂った】
6月23日、沖縄では慰霊の日に気が狂った。とは言っても突然ではなく、前兆はあった。妄想や幻聴に悩まされた。本島にいる一子お母に電話もかけた。「最近、頭がおかしい」。何とか救って欲しかった。このままでは職員に村八分にされてしまう。

【七夕】
7月7日は七夕の日。ちょうどこの日に北島に渡る計画を立てた。職員にはバスケットボールの交流試合という名目だったが、実は七夕の伝説(織り姫と彦星)にあやかろうとしたのであった。
学校で心のこもった歓迎会があった。蚊取り線香の匂いの中で食べたお好み焼きがおいしかった。

【船釣り】
島のダイバー、ヒサオさんの運転で北島から船に乗って帰った。途中で停舶し、ジョギング開始。メンバー全員船酔いでグロッキー。モーリーは周囲に撒き餌をした。こちらも思わずもらいそうになった。おえっ!ヒサオさん、巨大ヒーフチャー(ヘラヤガラ)をゲット。さすがは島人だ。

【学級レク】
1学期終了式の夕方、学級レクを開催した。まずはプールで水遊びをした。普段は味わえない夜のプールで、生徒たちは楽しそうに遊んでいた。ショーゴの母が差し入れしてくれたスイカでスイカ割りをした。その後はみんなで食堂に移動してカレーをいただいた。1人500円で腹いっぱい食べた。食堂のおばちゃん、ありがとう。最後は月見公園で花火をした。生徒は帰宅させ、大人はシロッパで懇親会を開いた。

【県柔道大会】
1学期終了式の翌日、コーイチローと同じ便で本島に飛んだ。明日は県柔道大会だ。那覇空港から、彼の叔父さんの車に乗せていただいた。間もなく到着というところで突然の土砂降り。荷台の荷物はびしょ濡れになった。玄関先で雨と戯れる息子の姿が印象的だった。私の顔を見るなり緊張したようだ。怖がられてしまい、ショックだった。

【夏休み】
いい夏休みにしようという気持ちで、休みを迎えた。しかし、落ち着くことなくわがままを繰り返す日々を送ってしまった。約ひと月、息子と一緒に暮らせると思うと浮かれずにはいられない。しかし、妻の信頼を取り戻す機会でもあるので、心のたがを外さずに、規則正しく生活したいと決心したのだが…。

【島に友人が来た】
大学時代の友人、セイコとトモコが研究の一環として島を訪れた。私が島に渡ってから、初の来客に心躍らせた。夜中にヤシガニを捕獲した。心躍る瞬間だった。

【エイサーに参加】
旧盆に青年会の誘いがあり、エイサーに参加することとなった。沖縄に住んでの初めての体験となった。島に戻り、失意の日々。生活に張りがなく、落ち込んでいた。気晴らしのつもりで参加したのだが、意外と楽しめた。島人(しまんちゅ)とも交流できてよかった。

【初めての小中合同運動会】
体育主任としての重圧を感じ、何度も崩れそうになりながらも職員に支えられて、無事に終えることができた。

【地区陸上大会】
大会には男子だけを引率した。保護者のアパートを借用し、経費を浮かせた。その分食事を豪華にできた。

【県学校体育研究大会】
初めて石垣島を訪れた。いい雰囲気を感じた。いつかここに住むこともあるのかな?あの高い山は於本岳だろうか?

【長崎】
家族三人での初旅行。息子が生まれ故郷に連れていく夢が叶った。本当に幸せだ。息子の肩にインコを乗せて写真を撮った。インコが気になるのか緊張の面もちだった

【ナガヤマさんとの再会】
かつて、小学校で補修していたときにお世話になったナガヤマさんと、偶然マイクロバスで擦れ違った。折角なので、空港で記念撮影した。

【ジャガイモをもらう】
給食センターの職員、ヒガシさんからジャガイモを一箱頂いた。そのまま妻の実家に送った。

【体育実技武道講習会】
空手の初段を受験するために、本島に行った。
帰りのバスの中で「○○先生ですか?」と声をかけられ、ドキっとする。港川中時代の女生徒だった。

【コ-イチロー、優勝】
県柔道大会でコーイチローが優勝した。気持ちのいい一本勝ちで、本人もすごく嬉しそうだった。彼から活力をもらった。決勝戦では相手が技をかけてきたところを踏ん張り、次の瞬間、腰に乗せて背負い投げ。鮮やかな返し技であった。

【コーイチローとシンスケの送別会】
3学期の親子学級レクとして送別会を開催した。
3月いっぱいで2名の生徒が転校する。コーイチローは柔道を学ぶために、福岡の中学校に転校。シンスケは実家のある読谷中学校に転校。前途ある若者よ、時々は今日のこの日を思い出してくれ!
午前中は学校行事のクリーン活動に参加した。夜は肝試し。学校車に便乗して、島内を1周した。途中、2人ずつ生徒を下ろしていき、車は数百メートル先で待機した。
夕食はコテージ内で焼肉。お母さん方が手伝ってくれて、大助かりだった。

【卒業式前日】
恒例のサプライズで、教師達から生徒に歌を贈った。曲は岡村孝子の「夢をあきらめないで」。私は感極まって、泣いてしまった。

【卒業祝い】
本島では考えられない恒例のイベント。全生徒の家庭を回ることができなかった。申し訳ございません。酒の席だったので、ちょっと嫌味なことも言われたが、聞き流そう。  

後編へと続く。

■筆者information

沖縄素潜り人 「 One Breath 」
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