ある詩人の場合 第5回


詩人と祈り

東京で活動しているある詩人が、「恋愛をテーマにした詩を依頼されることが多い」と言っているのを聞いた時、だいぶ衝撃を受けた。
わたしは恋愛をテーマにした詩を依頼されたことなんか、1度もない。
わたしに限らず沖縄の詩人は、もっと違うテーマを依頼されて、詩を書いているのではないか。

慰霊の日、戦争と平和、沖国大ヘリ事故。
わたしが今まで依頼されたのはこんなテーマだ。
沖縄ならではのテーマと言えるだろう。
6月になると、新聞社から原稿の依頼が来ることが多い。
慰霊の日をテーマにしてくれと言われる時もあれば、特に何も言われない時もある。

最初に自分の詩が新聞に掲載されたのは、大学4年の時。
その年の8月に、通っていた沖国大に米軍のヘリが墜落した。
翌月、その事故に抗議する市民大会が行われる日の新聞に、わたしの詩が掲載された。
その頃ちょうど中学校に教育実習に行っていたので、詩が載った新聞が自己紹介代わりになった。

県外で生活すれば、慰霊の日に対する価値観の違いに悲しい思いをすることがある。
沖縄に居たって一般企業は休みでなく、黙祷さえままならないこともある。

一社会人として慌ただしく生きる中、さまざまな人と関わる中で生じる違和感や憤りや祈りを詩にする。
誰かに強いられるのではなく、背伸びするのでもなく、自分の生活から生まれる詩を。

6月もそうだが、8月は立ち止まり考え祈る月。
広島原爆忌の6日、長崎原爆忌の9日、終戦記念日の15日。
そこにわたしは沖国大ヘリ墜落事故があった13日を加える。
他にももっと加えたい日もあるだろう。
さあ、忙しい中でも立ち止まり考え祈ろう。

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