ある詩人の場合 第11回


詩人と湯船

昨年の10月から土曜は湯船に浸かることにしている。
きっかけは、疲れをこまめに取った方が良いと思うようになったからである。
年が明けてからは、寒さも増し、土曜以外も湯船に浸かる日を増やしている。

ここ3年ほどは湯船に浸かることのない生活を送っていた。
その前までは冬は毎日湯船に浸かっていた。

20歳になる少し前まで住んでいた社宅には湯船があり、追い炊き機能まであった。
だから、小さい頃から冬は毎日湯船に浸かっていた。
父が定年退職して社宅に住めなくなってからは、湯船のあるアパートを探すことになった。
当時は家にパソコンやネット環境はなく、まだまだガラケー時代だったので、大学のパソコン室で湯船のあるアパートを検索しまくっていた。
同級生からは「何で親でなく、あなたがそんなに物件を探しているの?」と不思議がられた。
あの頃は、湯船のあるアパートは少なかった。
結局、親が見つけた湯船のあるマンションに住むことになった。

社会人になり、1人暮らしをするたびに湯船がある物件を探した。
20代の頃はユニットバスの家に住んでいたが、今はバストイレ別の家だ。

再び湯船に浸かるようになった頃、俳優の草笛光子さんが毎日湯船に浸かっていると知った。
「身体を温めたら病気にならないわよ」とテレビで話していた。
え?夏も?365日?

朝よく聴いているラジオ番組「アップ!!」の鎌田宏夢アナウンサーも、リスナーに湯船に浸かることを推奨している。
「帰宅したらカバンを下ろさずにそのまま浴室に行き、蛇口をひねって湯船にお湯を溜めるのが良いんです」
真似してみた。これはいい。

お湯に浸かるようになり、QOLが上がった気がする。
幸せだと思う時間が増えた。
疲れが取れるということもあるが、湯船に浸かる時間、その場には時計も携帯もない。
ただ、自分と向き合う。
換気扇の音を聴きながら、いろんな考え事をする。
換気扇の音に飽きたら歌えばいい。

今日も帰宅するなりカバンを下ろさずに浴室に向かい、蛇口をひねって湯船にお湯を溜める。
水道料金を気にしながら。

■筆者information
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