ある詩人の場合 第13回


詩人と観葉植物

最近、観葉植物の置き場についてよく考える。

あれは2年半前、仕事の内容が変わってから、とにかく疲れやすくなった。
その話を社長にしたら、糖尿病の疑いがないかどうか確認するために内科に行くように言われた。
検査をしたところ、特に問題はなかった。
医師からは「木のあるところを散歩するように」と言われた。
木のあるところ?公園か。
わざわざ公園に向かって散歩するのは、あまり手軽じゃないと思った。

そんなある日、友人があるYouTuberの動画を勧めてくれた。
その動画によると、パソコンの横に観葉植物を置くと、木のあるところを散歩するのと同じリラックス効果があるというのだ。
何てお手軽なんだ。

すぐに最寄りの100円ショップへ。
いろいろな小さな観葉植物の中から、気に入ったひと鉢を買った。
ブラッサイアというらしい。
ネットで調べると、水やりは週に一度。
直接日光に当てず、レースのカーテンの側に置くのが良いとのこと。
パソコンは窓辺に置いているのでちょうど良い。
それが一昨年の春のこと。

ブラッサイアはぐんぐん育った。
まもなく、買った時のポットでは小さくなり、少し大きい鉢に植え替えた。
以前、多肉植物をもらったことがあり、植え替えた途端、様子がおかしくなり、枯らしてしまったことがあった。
その時、土がいけなかったのだと反省している。
土が多肉植物に向いていなかったのではないかと思っている。
その反省を活かすべく、大きい鉢とともに、観葉植物用の土を買ったのだった。

さらにブラッサイアはぐんぐん育った。
新しい葉が出てくるのを見るのが嬉しい。
命の輝きってこういうことかしらと考える。
またさらに大きな鉢に植え替えだ。
これはバイオリンに似ている。
小さい子どもがバイオリンを習うと、成長に応じてバイオリンを買い替えるという。
子どもに大きいバイオリンを与えるように、私はブラッサイアに大きい鉢を与える。

その後、この年末年始にまた鉢の植え替えをした。
その100円ショップで売っているいちばん大きな鉢に。
ああ、また子どものバイオリンを買い替える親の気持ちになるのだ。

2月のある土曜の朝、植木鉢を見て「えっ!?」と叫んだ。
キノコが生えていたのである。
いつの間に?

母が植木鉢は外に出した方がいいと言い出した。
菌類と同じ部屋に居るのは、体調に悪影響を及ぼすのではないかと。
レースのカーテンの側に置く植木鉢を外に出していいものか迷った。

結局外に出してみた。
2月の寒さと強い風と雨。
ずっと部屋の中で育ってきたブラッサイア、強い風に吹かれて大丈夫だろうか。

2日後、植木鉢を見てまた驚いた。
キノコが消えていたのだ。
よーく土を見ると、キノコは干からびていた。
かわいそうなキノコ。
私はどうすれば良かったのだろう。

また植木鉢を室内に入れた。
家にいる時にいつでも植木鉢の様子を見ることができていい。

ある日「ホンマでっかTV」を見ていたら、ある先生が「寝室に観葉植物を置くのは良くない。植物は夜は光合成をしないので、人間と酸素の取り合いになり、頭痛の原因となる場合もある」と言うではないか。
ワンルームなんだから、部屋イコール寝室である。
ブラッサイアと酸素の取り合いをしないために、私は私の酸素を確保するために、またブラッサイアを外に出すのか?
あまり気が進まない。

とりあえず夜帰宅したら、窓を開けるようにしている。
さらに朝起きたらまた窓を開ける。
部屋にたくさんの酸素が入るように。
私とブラッサイアがたくさん酸素を吸い込めるように。

■お知らせ

Vectis EASTER LIVE
2022年4月16日(土)
時間/16:00〜16:40
会場/ライフセンタービブロス堂(那覇市曙)
料金/入場無料
私が参加しているゴスペルチームのコンサートです。賛美歌、ピアノ連弾、詩の朗読をします。

■筆者information
【著者サイト】https://mumirock1.wixsite.com/hiroko-toma
【Twitter】@hirokotoma
【Instagram】@hirokotoma


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