由緒正しき日本菓子の世界、このアンコ知らずは“あまい”
公設市場の側で営業を続け今年で70年。こちらも戦後の沖縄と共に歩んできた老舗で、沖縄かるかん発祥の場所としても有名だ。
多くの沖縄ぜんざいフリークが名店を語る時、末廣の名前が出るのを楽しみにしているが、やはり若い世代からはなかなか語られない。現代の写真映え重視なカラフルでモリモリの見た目とは違い、一気に古き良き時代へ気分も味覚も引っ張ってくれる、末廣のシンプルな沖縄ぜんざいが私は好きだ。
岩山の様に荒々しい出で立ちと、それを底でモッタリ支えるアンコの存在。老舗ならではの見た目だが、実はコレで小サイズだから驚き。市場に通い慣れた地元の人がパパっと食べて深呼吸して出ていく、そんな毎日のルーティンとしてここでの休憩が組み込まれていることも、確かな美味しさの証拠だ。
表には手書きのポップで様々な銘菓が宣伝され、映画のロケ地のようなノスタルジックさを感じる。数年前までは氷菓子の写真を見て、フラッと入ってくる外国人も非常に多かったんだとか。
創業者は出身地の宮古島を離れ、波の上にあった老舗の菓子店「大黒屋」で修行した後、兄弟で菓子を売る露天を開いた。当時ヂーカステラが有名となり、引き出物としてカステラは飛ぶように売れたそう。2代目店主は兵庫県の有名店「エーデルワイス」での修行を経て、彼もまた兄弟でまだ洋菓子店の少ない時代から洋菓子販売を行ってきた。
そんな沖縄お菓子界を牽引してきた名店、今も波上宮の正月菓子や沖宮の茶屋菓子なども製作しており、行事の季節になると多くの注文が寄せられるそう。
和菓子を販売する希少な店、もちろんホールケーキも!
そんな歴史を聞きつつ眺める、ケースの中の和菓子は美しすぎて食べるのがもったいない!上品な見た目と手書きの品書きは、ここが沖縄であることを一瞬忘れるくらい“和の心”を感じる。それを証拠に、県外からの移住者に、この和菓子を求めて通う人が多いそう。
ではそろそろ本題だが、それぞれが鮮やかな単色で構成された氷菓子はどれも本物のフルーツや黒糖を手作りソースにしている。まさに素材そのものの味と甘さなのだ。化学調味料は一切なく、その時々の素材の甘さと色が氷にかけられる。
1番人気はやはり「沖縄ぜんざい 小500円」。氷の先までたっぷり染み込んだ黒糖シロップは、多良間島の黒糖を使用しており、さすが宮古島にルーツを持つ場所と先代の思いを感じた。末廣で作られるお菓子はみんな、この多良間島の黒糖を用いられている。
荒々しく削られた氷山、実は見た目とは裏腹にフワフワな氷はスプーンを当てるとサラッと落ちてくるので、崩れ落ちないように丁寧にそぎ取る。口に入れて驚くのは、本当に黒糖そのままでそれ以外は何もないシンプルな甘さだ。この潔さ、見た目の荒さともリンクして非常にイイ!
喉奥へゆっくり流れる甘味の心地良さ、上品なアンコに思考が支配されて飲むお茶の心地良さ。あぁ、幸せだなぁと外を眺めて氷山登頂終了!那覇の中心で味わう沖縄ぜんざい×和の世界、なんという贅沢な時間。私も毎日ここで一休みしたくなった。
沖縄行事の定番お菓子と一緒にショーケースに並ぶ和菓子、その真横にはシンプルな洋菓子と、つい大量買いしてしまうオリジナルのカットケーキ。コレは本当に仕事中のオヤツにピッタリサイズ。シュークリームは手土産として、遠方から買いに来る人もいる人気商品。
移転を繰り返した末廣、近年は前店舗場所に「末廣ブルース」という居酒屋が開店、末廣の古き良き雰囲気を引継ぎたいとノスタルジックな店作りで営業し話題となっている。居酒屋の経営陣は末廣製菓と関係ない方だそうだが、居酒屋をきっかけに菓子店を知り足を運ぶ若者もいるそうで、良好な関係が築かれている。
ぜひ沖縄ぜんざいを食べ歩く若者に、末廣の歴史ある味も知ってほしい。
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