SPECIAL INTERVIEW

UMITO PLAGE
レストランaisance シェフ

高坂 星也

Seiya Takasaka

出会いこそ最高の美味しさを作る
『つなぐ役』
生産者と消費者をつなぐ役割が、
料理をする者だと思っています。

京都「吉兆」の総料理長・徳岡邦夫氏や、テレビでも活躍されるシェフ・鎧塚俊彦氏など、華々しい有名料理人が審査員も務める注目の大会、RYORININ’s EMERGING DREAM、通称『RED U-35』。
そこに唯一の沖縄在中シェフとして名を挙げた高坂さん。恩納村のレストランaisanceで料理長を務める若きシェフの目に写っているのは、沖縄の青い空でも海でもなく、この沖縄が生み出した食材と生産者の姿だった。

しかし天は二物を与えすぎのイケメンシェフ。料理への思いも真っ直ぐで気持ち良い。「料理をすること」の原点を気づかせてくれた、高坂シェフのスペシャルインタビュー。

直談判して学んだ、尊敬する2人と父の存在

●高坂シェフの生まれ育ち、料理の道のスタートはどんなものですか?
生まれも育ちも東京の渋谷区、ずっと東京界隈で生活し料理の勉強も東京でした。
父が料理人で幼い頃から自然と料理人を目指していましたが、なんとなく大学進学をし、結局は早く料理の仕事がしたくて、卒業しないまま父の店で働き出しました。
父が恵比寿でイタリアンレストランをしていたので、4年間はサービスと料理の基本を学ばせてもらいました。その中で「もっと上のレベルに」との気持ちが強くなり、フレンチに興味を持ち東京のミクニでパティシエと料理の技術を学ばせてもらいました。
それから二つ星レストランのESqUISSE(エスキス)で修行させてもらうんですが、当時いらっしゃったパティシエの成田さんとシェフだったリオネルさんに感銘を受け、求人応募したんですが通らず。客として食事に行き「どうしても働きたい」と直談判しました。今でもお2人を尊敬しており、料理に対する哲学や考え方、スタイルは影響を受けています。

●沖縄へ来るきっかけはなんですか?
その後に少し大きいイタリアンレストランで働いたり、当時ESqUISSEの副料理長であった信太竜馬さんの開業準備を手伝わせて頂いている時に、父から「沖縄に来ないか」と声がかかりました。
父は元々沖縄が大好きで沖縄移住していたんです。そしてこのホテル「UMITOPLAGE」開業時に父は料理長として、僕は副料理長として就任することになりました。
父は現在、沖縄で新しい挑戦として糸満で「麺屋 鳥やま」というラーメン店で、レシピ開発や調理をしているんです。驚きましたが父らしくて。もちろん今も仲良く行き来していますよ!

天は二物を与えすぎ、料理以外なんにも見えていないイケメン

●料理人以外で、これまで憧れたものや夢はありますか?
全く無いんです。幼稚園の頃から料理人になりたいと言っていて、たまに趣味とか聞かれるんですが全く、家でも職場でも料理の事しか考えていないんです。人物像とか聞かれてもつまらないんです…。

●でも高坂さんは背も高くてスタイル抜群です!スポーツ選手やモデルさんにスカウトされた事はないんですか?
ありがたい事に声をかけていただいたことも何度かあったんですが興味なく。(笑)ひとまず何か趣味を持った方がいいかなと考えた日もありましたが続かず。ずっと出来るのが料理だけ、何時間でも飽きないんですよね。

●そんな、勿体無い。(笑)
いや、でも僕はコンプレックスが強いんです。料理の世界を極めたい人は高校や専門学校を出てすぐ現場に入り外国へ行ったり、即戦力でグイグイのし上がっていくんです。僕は大学を中退し、三國さんの元で修業を始めた時、調理用語すら知りませんでしたから、出遅れている思いが強いです。
基本的な考えとして持っているのが「同じ人間が料理しているのに、この人に出来て自分に出来ないのは努力が足りないから」と感じるんです。だからこそ越えたい気持ちが強く、それが励みになり楽しかったりもするんです。

●元来、負けず嫌いな性格ということでしょうか?
いえ、悔しいとか勝ちたいとかではなく、純粋に超えたいと思う憧れに近いです。できた時の楽しさや感動、その「楽しい」が1番欲しいかもしれません。
昨今はネットも発達し世界中の技やアイデアがすぐ動画で見れ、知ることが出来ます。だから若い人も実力があればどんどん料理長になっています。そう考えると今の僕は若いのにとも言い切れず、同年代なら星付きの料理長も多いです。だからそういったのを1つずつ越えていくのを楽しんでいます。

●音楽業界と同じく、YouTubeの存在は料理の世界にも影響があるんですね。
ネットの普及は大きいです。昔は現場で見て覚えたものが全てでしたが、今は検索すると求めているものがどんどん出てきます。だからこそ真似事だけになる人も多くなっています。
料理はもっとクリエイティブでありたいと思っていて、世間で評価される人に出会う度、素人目では分からない部分に「どれだけ時間を費やし努力してきただろう」と感動します。だから評価されている事に納得もしますし、自分もそうでなくちゃと思います。

●実力=努力という事でしょうか?
料理の世界に才能なんて無いと思っています。その分「運」は大きいとも思います。良い上司に巡り合い、良い人格者に出会うという「運」はありますが、大半は自分とどれだけ向き合いストイックにやってきたかなのかと。
僕は他に何にも興味を持てなかったので、料理に全時間をつぎ込み、常に向き合う姿勢でいたつもりです。学生時代に好きだった「遊び」も、かっぱ橋道具街で調理器具を見たり、市場で食材を見て話を聞いて、興味あれば農家まで行き畑を見せてもらったり…。そうやって追う事が楽しくて!畑と市場で見比べ、どう変化していくのかを知ったりするのが楽しかったです!今でもそれが続いてて、料理に向き合う努力や食材への追求、ストイックになる事に繋がっていれば嬉しいなと思っていたりします。

難易度「高」だから辛くも楽しい沖縄

●沖縄へ来ての感想はどうですか?
1番感じているのは紫外線が強い分、食材のアクが強いということです。日光に負けない様に強くなるので存在感が強いです。
料理の一部にアクセントとしてパッとは使えるんですが、メインに持ってくると癖が強すぎて難しいものも多いです。「別の人ならこうするかな?」などを考え試行錯誤、やっぱり自分の実力が足りないから食材を活かしきれないかもと悩み、追求しに市場に行き食材と向き合い…、そんな日々の繰り返しです。
定番ですがゴーヤーは単純に苦戦します。活かせられたら料理として非常に良いと思うんです。ゴーヤーチャンプルとかはカツオダシのコクと苦味があり、先人の知識やアイデアは凄いと感心する料理です。
料理を作る上で勘違いする方も多いのが、食材を殺して馴染ませている場合です。その食材の個性を立たせつつ強い癖が目立ちすぎない、良い頃合いを追求したいと思っています。


●今、魅力を感じていたり挑戦したい食材はありますか?また種類豊富な芋もありますが興味はありますか?
フレッシュ状態のタマリンドは色々工夫してみたいです。沖縄で栽培されているらしいのでぜひ!芋はやっぱり紅芋のイメージが強かったので使っています。田芋も使ってみたいと思いつつ、今後向き合ってみたいですね。

●レストランでは、どんなテーマで料理をされていますか?
沖縄にもフレンチレストランはありますが、あえて東京にあるようなフレンチを意識して作っています。沖縄食材だけを使うことは他店でも多いことなので。沖縄の自然の中にいながら、東京クラスのフレンチを食べられると評価をいただいているので、自分のやってきたことを信じて、スタイルは変えず自分らしくやらせてもらっています。フレンチにあえてゴーヤーばかり出さないのが良いと言ってもらったりもします。
食事される方はホテルに宿泊する県外の方も多いですが、半分くらいは県内の方なので、緊急事態宣言が明けて落ち着けば記念日や会食でも、多くの方に食べに来てもらいたいです。
※緊急事態発令中は宿泊のお客様に限り、各部屋へ料理を運んでの提供

●高坂さんが料理をする上で、共通して考えることはありますか?
コース料理を作る人は皆さんだと思いますが、一皿で満足できない未完成を出すのを心がけます。一皿ごとに満足すると、最後の方は「もういいや」と感じてくるんです。もう少し酸味欲しいってタイミングで酸味あるソースが出たり、甘いの欲しいってタイミングでデザートになったり、味わいで誘導し次のお皿でそれを満たすのを心がけています
フレンチはコースが10皿なら、それで1つの料理と考えるんです。もちろんここにはドリンクも含まれていて、このタイミングでコレを飲んでいただくとか、そこまで含めて1つの料理と捉えています

●普段の食事でも、そういった流れを意識するんですか?
自分で作るのは逆ですね!これ入れたら美味しく無いだろうという食材をあえて合わせたり、いわゆる実験です。普段はない組み合わせを食べてみたいと思うんです。
他店に食事へ行っても「これとこれ組み合わせちゃうの?」と意外性あるものを選びます。食べる前に想像できてしまうのは面白くないので、常に新しいものへ挑戦する食生活です。(笑)案の定、美味しくないとか合わないと思いながら食べることもありますし、確信を持って入れることもあります。遊び心を忘れないようにしています。

●一緒に食事するのは少し悩みますね。(笑)そんな高坂さんが普段よく食べるものは何ですか?
パンは好きですね!基本的に自分で作るようにしてて、ハンバーガーもバンズから仕込みパテを焼いて、具材を詰めたり、極力時間がある時はそうしたいと思っています。
逆にあまり周りの人が作った料理を食べる機会が無いです。どんな時も料理になるまでの過程を知りたくて、食材がどう扱われてきたか分からない状況だと食べないかもしれません。大切な人にこれを食べさせたいとか、気持ちも大事だと思っているんです。空腹を満たせたらOK、チャチャっと作って食べれれば良いという雑な感じでは食べたくないんです。

1.「繋がり」

●今回のRED U-35大会への応募はどの様な経緯がありますか?
応募したのは初めてですが、大会の存在を知ったのは第1回大会で8年程前なんです。父の店で働いていた頃、出場打診が店に来たんですが、実力もまだまだと理解していましたし、性格的にも大会に出るタイプでは無かったので考え無かったんです。意識、高くなかったですね。(笑)
そこから料理を本気でやり、二つ星レストランやフレンチの代表店の厨房に立ち、段々と自分がどこまでいけるのか試したい気持ちが強くなりました。一生懸命、もう無理だと思う所までやり、限界を知りたい、実力を知りたい、そう思い応募しました。

●RED U-35への出場で苦戦した部分はありますか?
やはり食材の調達に苦戦しました。今回メインに鰻を使っているんですが、これは沖縄に来て1番最初に出会った生産者が金武町にあった養鰻所で、その方が閉業すると聞きあえて選びました。閉業理由を聞くと、鰻の養殖は全て天然稚魚を購入し養殖していて、人工孵化はできないので、沖縄で続けるには金銭的にも大変だと苦労を話してくれました。近年は研究が進み近い将来、人工孵化した鰻が出回る話もありますが、まだ一般的ではないです。
養鰻所の方は、代々親たちが大切にしてきた場所を自分が終わらせないといけない辛さ、そんな情勢になってしまった時代や環境への気持ちを教えてくれました。大会に出すならこの食材だと強く確信し、鰻を中心に合う食材を探して、ハナニラと赤紫蘇を使うことにしました。

●養鰻所との出会いが、今回の一皿を完成させたということですか?
そうですね。料理人は生産者と消費者を繋ぐ立場だと思っていて、生産者の悩みも喜びも大切に料理にして繋ぐ、とても重要な役割だと思っています。
養鰻所の話を聞いた者として、それを大切に料理にしたり語って伝えたいです。そういう話からフードロスの問題に目を向けてもらったり、辛い思いをする生産者を減らせたらなと思ったりします。

●これが高坂さんが最初に選んだ言葉「繋がり」の内容ですね!
生産者と消費者の間の料理人は、その素材を何にでも変えることが出来る存在なので、生産者の心すら良くも悪くも伝える役割だと思っています。だからこそ作った人の気持ちや想いを素直にしっかり伝えることができれば、それを感じながら食べてもらえたら、単純に食材という「物」が動くだけではなく、人と人を繋げる役割なんだなと思うようにしています。

2.「たりないものはチャンスだけ」

●料理を出品してみて手応えはどうですか?
僕の性格でもあるんですけど、完成させた料理も少し時間が経つと後悔が始まるんです。もっと見せ方や食材の活かし方はあったんじゃないかと感じてきます。
出した直後はヨシっ!これで!と思っているんですけど時間が経つ分、疑問も出て。だからレストランメニューも日々形が変わっていくんです。昨日よりも今日の方が、もっと明日の方が良くなると考えているんです。サービス担当の方は大変苦労されていると思います。(笑)感謝ですね。でもこれが次へのステップ、糧になっていくと思っています。

●ではこの大会出場も次へのステップを得られたということでしょうか。2つ目の言葉「たりないものはチャンスだけ」に込められているのは、こうやってチャンスを掴みにいくという意味でしょうか?
それもありますが準備の話です。高校生の頃から頭に残っているチャップリンの言葉で、野球のイチローさんも同じ事を言われていたんですが、準備は常に一生懸命、毎日努力して蓄えて、後はそれを出すチャンスが来るのを待つだけという意味です。どんな時でもステージに持っていけるかどうか、そのチャンスが来た時、確実に掴めるようにしっかり準備して待つのが大事だと思っています。
修行をしていた頃は、店で出している料理を家でも作っていたんです。エスキスでの修行では早朝から深夜まで働くこともありましたが、帰ったら必ず復習をしたり実践をしました。新しく鹿肉が入ると聞けば同じ食材を自分も購入し、肉の火入れ練習をしました。翌日もし仮に肉を焼く人が倒れたり来られないハプニングがあっても、「僕が焼けます」と立候補が出来る、チャンスを掴めるように準備をしていました。少しでも時間を見つけたら焼いている人に聞き、明日来るかもしれないチャンスに備えていました。次の休み、時間が出来た頃にと後回しにしたくない、今を意識して料理人として生きていたいと常に思っています。

3.「料理は愛情」

●なんだか当たり前じゃん!と言いたくなる言葉ですが、ここまで高坂さんの話を聞いてきて、この言葉に深い想いを感じられる気がします。
これは父がずっと言っている言葉です。僕も一緒に働いている時は「当たり前じゃないか、何を言ってるんだろう」と思っていました。こんなに真剣に考えて真剣に取り組んで、いちいち言葉に出さなくても分かっているよってくらいに思っていたんです。
しかし料理を続けていく中で、辛い日も多く、2時間しか寝ていなけど翌日も立ちっぱなしと疲労困憊な時期もありました。でもそれは何の理由にもならなくて、常に自分の持つ最高の料理を出さなくてはと思うんです。体調が悪いとか不都合があったとか、何かを言い訳にしないで努力する事は、やっぱり食べる人を、誰かを思いやる愛情が無いと出来ないことだらけなんです。
そんな中で父の「料理は愛情」という言葉が1周まわって心に蘇ってきました。当たり前の言葉ですが、これが凄く大事だと思っています。

●高坂さんのお料理、お話を聞く前より何十倍も食べたくなりました!レストランもロマンチックな雰囲気ですね!私も自分のご褒美に食べに来ます!最後に読んでいる方へメッセージをお願いします。
(ずいぶん困られた様子で)本当に料理以外は駄目で、話をまとめるって難しいですね。(笑)でも言えることは生産者や料理の話に限らず、人の気持ちを知って考えて大事に伝えていくというのは、料理も生き方も全部に対して重要なことだと思っています。
お客様がどんな気持ちで食べに来ているのか、どんな気持ちで野菜を作っているのか、全ての人の気持ちを尊重して、それに寄り添った料理を作っていきたいです。

常に落ち着いたトーンで、しっかり考えながら話してくださった高坂さん。その言葉から料理への想いだけでなく、「繋ぐもの」としての責任をしっかり伝えたいという気持ちが感じられた。まずは参加されているRED U-35大会の行方を見守りながら、高坂さんが繋いでいく想いに注目を続けたいと思った。

PROFILE

イタリアンレストランでオーナーシェフを務める父の姿に憧れ、高校を卒業後、幼少のころから夢に見た料理人の道を歩み始める。
2014年 Restaurant「ミクニ」、Patisserie「Le pommier」、ミシュラン2つ星 Restaurant「ESqUISSE」で研鑽を積む。
2019年 Restaurant「La Boheme」にてシェフを務める。
2020年 Restaurant「aisance」シェフ 就任。                                                  

RED U-35 2021 ONLINE
ブロンズエッグ応援グランプリ2021 【第3回 映像を応援!】

応募総数508名の中から一次審査/ドキュメント審査を勝ち抜いた若き挑戦者51名が登場。
Twitterと連動した「ブロンズエッグ応援グランプリ2021」を開催。
高坂星也シェフは「料理名:想起」でエントリー中!

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