ある詩人の場合 第1回


詩人という生き方


小さい頃は小説家になりたいと、高校や大学の頃はエッセイストになりたいと思っていたが、詩人になりたいと思ったことはなかった。
だけど今、詩人と名乗っている。自称ではなく。

小さい頃から文章を書くことが好きで、大学で文芸部に入り、詩とエッセイを書いていた。
月に1回フリーペーパーを、年に2回文芸誌を制作し、4年次の頃には新聞や文芸年鑑といいた学外の媒体に寄稿する機会が与えられた。
大学を卒業する2005年に、大学4年間に書いた詩とエッセイをそれぞれ本にまとめた。
それが第1詩集『ラジオをつけない日』と、エッセイ集『裏通りを闊歩』である。

それは4年後の2009年のことだった。
その年はちょっとすごい年だった。
春に出した2冊目の詩集『ひとりカレンダー』が山之口貘賞を受賞したのである。
秋にはNHK生活人新書から出版された、アンソロジー詩集『通勤電車でよむ詩集』に「ひとつでいい」という詩が収録された。
年末には、歌詞を担当した「星のクリスマス」という歌が、「おきなわのホームソング」としてテレビやラジオで放送された。

その夏、新聞社からコラムの依頼が来た時に、コラムの末尾に肩書を書くように言われた。
なんて書こう?と悩んだ。この依頼はわたしが詩を書いているから来たものだ。
職業を書くのは違うと思った。
悩みに悩んで自分が書いたある肩書を、担当記者さんは訂正してくれた。
「詩人と書いてください」と。
え?わたし詩人って名乗ってもいいんだ、と驚いた。
それと同時になぜかしっくり腑に落ちた。

詩人としていろいろな方と会うことが増えてきて、詩人用の名刺を作ることが必要だと思うようになった。
現在は仕事用と詩人用の名刺を持ち歩いている。

詩人を職業としている人は日本中でもほんの一握り、大抵の詩人は他に仕事をしながら“詩人している”。
沖縄では伝統的に新聞記者や教員が多いが、そうでない人もたくさんいる。
ちなみにわたしは広告の仕事をしている。
詩を書くことは、わたしにとっては趣味とも特技とも違う。
履歴書を書く時、趣味、特技の欄を見ると詩はどちらにあてはまるのかと考える。
無理やりどちらかにねじ込んで書いているが、ちょっと違う。
ライフワークというか何というか。
ある芸人さんが、テレビか何かで「芸人は職業ではなく生き方だ」と言っているのを聞いた。
これだ!詩人は生き方なのである。
これもまたしっくり腑に落ちたのだった。

■筆者information
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