ある詩人の場合 第15回


詩人と20代の頃


あと約3ヶ月半で40歳になる。

母いわく40歳になった途端、老眼になったらしい。

先日がん検診の券が送られてきて、急に検査対象がグッと増えていて、こんなにたくさん受けるの?と驚いている。

先月は、気付いたら右目が出血していた。
充血ではなく、べっとり出血しているではないか。
周りの40〜60代の人に聞くと、何人か同じような経験をしたことがある人がいることがわかった。
重い物を持った時に出血するという人もいた。
眼科でも、医師は年をとるとよくあることで、「子どもの鼻血みたいなものです」と3回言った。
2週間で治るかと思ったら、3週間かかった。

さて、最近20代に関心を持っていたことに関心がなくなってきたことに気付く。

車を運転していると、とある花屋さんの横で信号待ちをすることが多い。
その花屋さんにはシャンデリアが輝いている。
20代の頃はシャンデリアが好きだった。
花屋さんやカフェにあるカジュアルな感じのシャンデリア。
多分、学生の頃から、社会人1〜3年目の東京時代も、沖縄に帰って来てからも。
実際に購入はしていないが、いつか購入したいと値段を調べていた。

20代の頃は蜷川実花さんの写真が好きだった。
特に東京にいた時は、展示会に行ったり、ムックを買ったりしていた。
沖縄に帰ってからも、浦添市美術館で蜷川実花展が行われた時は2回観に行った。

20代の頃は日産CUBEが好きだった。
四角っぽいフォルムや、ワッフルのようなホイールがたまらなく気に入っていた。
埼玉の工場の先輩がCUBEに乗っていて、一度だけ乗せてもらった時、相当嬉しかった。
今は特に好きな車はなく、あのCUBEへの情熱が今となっては不思議だ。

20代の頃はよく「頑固だね」「強いね」と言われた。今も誰も言わないだけで頑固かもしれないけど、今は全然強くない。弱い、弱い。

とにかく20代の頃はがんばっていた。
30代はがんばってばかりいないで、休むことが大事ということを徐々に身につけるための10年だったような気がする。
外見も細眉から太眉にシフトし、今、細眉の時の写真を見ると尖っているな、性格悪そうだなと思ってしまう。

20代の頃のがんばる私にとって、キラキラしたシャンデリアや、色鮮やかな蜷川実花さんの写真やおしゃれなCUBEが必要だったのかもしれない。
それらに背中を押され、行動力の源になっていたのだろう。

昨年の秋に、HSPや自己肯定感に関する情報を受け取ることを辞めた。
一昨年の初めからHSPと自己肯定感に関する本をたくさん読み、関連するSNSをたくさんフォローし、ウェビナーにも何度か参加していた。
情報を受け取るのを辞めると、いつの間にか、HSPのことも自己肯定感のことも一切気にならなくなった。

自己肯定感の低さと、向上心の高さは関係するのではないかと思う。
自分に高いハードルを課するから、それができない自分が嫌になるのではないだろうか。
私は以前に比べて、自分に課すハードルはかなり低くなった。
とりあえず会社に行くことができればOKと思っている。
悩みや課題はあるにせよ、以前よりかなり身軽だ。

40代はどんな10年になるだろう。
こんなことを同い年の友達と、ごはんを食べながら話したい。

■筆者information
【著者サイト】https://mumirock1.wixsite.com/hiroko-toma
【Twitter】@hirokotoma
【Instagram】@hirokotoma


別のコラムを読む

NEW PICKUP


やきいも

車内カーナビを頼りに所在地の住所を入力し訪ねると周囲は緑に囲まれた中に「焼き芋」という幟(のぼり)が見える。その幟のそばには「名前の無い美味しいやきいもやさん」がある。

桜杏(那覇市)

「人々の健康のお手伝い」をしたいという小さな母娘が経営するお店の大きな思いは店内の商品からも感じる。

NEW PICKUP


やきいも

車内カーナビを頼りに所在地の住所を入力し訪ねると周囲は緑に囲まれた中に「焼き芋」という幟(のぼり)が見える。その幟のそばには「名前の無い美味しいやきいもやさん」がある。

桜杏(那覇市)

「人々の健康のお手伝い」をしたいという小さな母娘が経営するお店の大きな思いは店内の商品からも感じる。