人生七転び八起き Vol.17


★コラム17 ライフガード

昔、「駅前留学」って言葉がはやりましたが、私は「基地内留学」しました。
これまでの時間に追われる仕事から、体を動かす仕事に変わり、「こっちの方が性に合ってるなぁ」としみじみ思いました。肩肘張らずにのんびりと暮らしていこう。

仕事内容を簡単に言うと説明すると、プールの監視員です。ライフガードを直訳すると「命を守る人」ですが、監視員よりもライフガードの方が聞こえがいいですよね。個人的にカッコイイ感じがします。

1日の流れはざっとこんな感じです。朝9時に出勤して、シフトの確認、掃除、監視、水質検査、18時に帰宅です。時々、トレーニング(救助法、心肺蘇生法など)が入ります。

働き始めてから分かったのですが、約20人の従業員の内、日本人は私1人。そして、バイト生はほとんどが高校生という異世界でした。初めは言葉も通じずにコミュニケーションが取れず、疎外感に悩まされました。徐々に職場に行きたくなくなり、しまいにはマネージャーや更に上の上司に「日本人スタッフのいるプールに異動させてくれ」とお願いしました。かなり、精神的に参りました。

当時、私は英語検定準二級を取得していましたが、全く通用しないことに気付いたので、近いうちに二級に挑戦しようと決めました(しかし、二級取得は2年後になります)。

ピンチはチャンス。持ち前の前向きな性格が幸いし、「多くの人は英語を学ぶために、高いお金を払って留学する」「私はタダで英語を学べる環境にいる」「これはチャンスなんだ」と考え方を変えることにしました。

そうすると、次第に同僚達と打ち解けるようになり、仲良しの友人もできました。私は自分の殻に閉じこもっていただけだったのです。この友人とはプライベートでも遊ぶ仲になり、ハロウィンのダンスパーティーで一緒に踊りました。

私、勤務中の掃除が好きなんですよね。内向的なんでしょうか。誰とも話さず、1人黙々と作業することが好きなんです。特にトイレ掃除を頑張りましたね。鏡や蛇口をピカピカにしたり、小便器の部品を外して、高濃度の漂白剤に漬けたりもしました。

そういう姿勢が認められて、職場でその週に頑張った人をたたえる「ライフガード オブ ザ ウィーク」に選ばれたこともあります。米軍施設で9年程働いているので分かるのですが、アメリカ人が日本人を認めるって、なかなかないんですよね。いつものように掃除していると、出勤してきたマネージャーに「You are amaging」と言われたこともあります。私ってアメイジングなんですね。掃除をするって、私にとっては当たり前のことなんですけど。

また、日本の英語教育が役に立たないことを身をもって体験しました。恥ずかしながら中学、高校、大学と8年間も英語を学びましたが、これが全く使えないんです。相手が何を言っているのか、聞き取ることができませんでした。読む力はそれなりにあったので、文字を通して何とか理解することができました。しかし、「聞く」と「読む」では時間が全く変わってきます。英会話で1番大事なのは相手の言葉を聞き取る力、つまり「耳」だということに気付きました。

ある日、自宅で仮眠から目覚めると、妻が「さっき、英語で寝言いっていたよ」と教えてくれました。それって、少しずつ英語脳になっていっている証拠じゃないかなと嬉しく思いました。

仕事を通して、マネージャーの娘さんや息子さんと仲良くなりました。娘のマデリンに「英語を教えてくれ」と頼んだら、すっかりその気になり、英語の本を持ってきて、私に発音などを教えてくれました。仕事を辞めて、彼らと久しぶりに会った時に「I miss you」と抱きついてきてくれました。あー、アメリカ人は表現がダイレクトなのねー。嬉しいけれど、おじさん照れるわ〜。

こんなことがありました。交代時間を守らない少年に対して、激しく注意したことがあります。普段は穏やかな私が珍しく怒ったので、仲良しのリッチアンが心配してかけつけてくれました。

また、営業中に雷が鳴ったり、光ったりすると、即座にお客さんをプールから出して、30分間クローズという決まりがあります。そういう時は内心「ラッキー」と思っていました。

まあ、紆余曲折ありましたが、半年間こんな感じで楽しく働くことができました。そして、私は運良く基地従業員になることができました。

次回はレクレーションアシスタントのお話です。

■筆者information

沖縄素潜り人 「 One Breath 」
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